※2020.3.10 記事を訂正しました。
[誤]グリーン(達成型) -> [正]グリーン(多元型)
『ティール組織』という本を読んでいます。組織の本なのですが、今回の新型コロナウィルスで起こっている様々な変化を捉える上で、非常に示唆に富んでいると感じたのでご紹介したいと思います。
2. ティール組織とは何か?
人類は文明の発展と共に、組織の形も進化してきました。この進化の過程と特徴を「色」で例える理論があります。有名なところでは、ケン・ウィルバーの「インテグラル理論(スパイラル・ダイナミクス)」です。これらの理論を元に、著者が様々な組織を調査し、新たに定義したのが次のような組織の進化モデルです。
無色:血縁関係を中心とする小さな集団
マゼンダ(神秘的):部族。日本でいうと卑弥呼とかの時代?
レッド(衝動的):力が支配する組織。強さが正義。マフィアやギャング。
アンバー(順応型):ルールが全て。階層構造。日本で言うと官僚の世界。
オレンジ(達成型):実力主義。日本の多くの企業がこれ。目標達成がとにかく大事。
グリーン(多元型):多様性と平等が大事。NPOやボランティア組織など。
ティール(進化型):組織を生命体に例え、メンバー一人一人の自主性が重要とされる。
各組織の解説については、こちらのブログが参考になるかと思います。
https://nol-blog.com/what_is_teal_organization/
詳しくは本を読んでいただきたいのですが、変化の激しい時代に自然発生的に生まれたのが「ティール(進化型)」という組織です。今回のコロナの出来事をティール組織の視点から解釈していきたいと思います。
1-1. ティール組織の3つの突破口(ブレークスルー)
ティール組織には3つの要素があると書かれています。書籍内では「3つの突破口(ブレークスルー)」と言われているものです。
- 自主経営
- 全体性(ホールネス)
- 存在目的
今日の記事では上記の3つのうち、「全体性(ホールネス)」について書いてみたいと思います。
2. 全体性(ホールネス)とは何か?
まず、ホールネスについてです。ここは私の解釈になりますが、ホールネスをあえてわかりやすく書くとしたら4つあると思います。
個人としてのホールネス
私たちは、仕事に行くときにどうしても自分の一部分を家に置いてくることになります。
例えば、多くの女性の場合で言うと「妻である私」「母である私」も私の一部であるにもかかわらず、それをまるでなかったかのように振舞わなければならなかったり。逆に、職場で「子どもが熱を出して・・・」と言ったことで周りに嫌な顔をされたりということもあるかもしれません。
ですから、「仕事に、家庭のことを持ち込むな」という価値観があると、「妻である私」「母である私」「社会人としての私」がバラバラになってしまいがちです。そして、「仕事に、家庭のことを持ち込むな」は従来の組織では比較的多い考え方なのではないでしょうか?
一方、ホールネスはこれとは逆の考え方になります。「妻である私」「母である私」「社会人としての私」その全てを、くっつけたままでいいということです。仕事を休む上で私生活のことを考慮するのは当然だ、という考え方です。
自分と他人のホールネス
自分と他人もまたつながっている、というホールネスも存在します。
組織としてのホールネス
「組織」もまだ全体ではありません。ある1つの組織も、社会の一部であるという考え方もまたホールネスです。
ある組織とそれ以外の組織や人との境目が曖昧になってきます。
以前であれば、副業禁止の会社が多かったと思います。ですが、副業や兼業をOKにしたする組織や、会社のメンバーが社員ではなく、業務委託(外部のフリーランスや起業家)の人たちが集まって会社の仕事を行っている、という組織も増えてきました。
ちなみに、私も実際に3社から業務委託で仕事を請け負っています。
ですから、形態としてはフリーランスではありますが、実際の働き方としては3社を副業している会社員みたいな感じです。当然、そうなると働く場所は会社ではなく、コワーキングスペースなどの「サードプレース(会社でも自宅でもない第3の場所)」が居場所になります。
人類と自然のホールネス
人類と自然も、今では分離されてしまっている感じがあります。しかし、当たり前の話ですが、人類も自然の一部であるはずです。
人類と自然も統合していく、ということもホールネスに当たります。
3. コロナウィルスがもたらしたホールネス
コロナウィルスという脅威は、皮肉にも人類に意識の進化(パラダイムシフト)の呼水となったように思います。
こういった脅威に立ち向かうには、今までのやり方ではうまくいかないということに、多くの人が気がつくきっかけを生んだように思います。
個人としてのホールネス
子どもを連れて出社している方の事例をニュースでみました。
これは、個人としてのホールネスが進んでいると感じました。職場に子どもがいることは、必ずしもデメリットばかりではなく、メリットを感じる人も出てくるのではないでしょうか?緊急時に会社が柔軟な対応をしてくれたことで、会社への感謝を感じた人もいるかもしれません。その結果、仕事をもっと頑張ろうという人も現れるかもしれません。
自分と他人のホールネス
トイレットペーパーが足りないということで、奪い合う場面、分け合う場面などいろいろなことが起こっているようです。
ティール組織の以下の文章がまさに、奪い合いの様子を本質的に解説していると思います。
全体性(ホールネス)の追求は、決して簡単ではない。私たちは、何か混乱が起こると、バラバラに避難場所を探したくなる。人間らしい心はなりを潜め、エゴが前面に躍り出て、自分の安全確保のために行動するようになる。
しかしその行動によって失われるのは安全なのだ。なぜなら、他人や自分自身を、愛情と受容の対象ではなく、恐れと判定(ジャッジメント)の対象として捉えるようになるからだ。
人生でもっとも崇高な目標は、孤立を克服し、全体性(ホールネス)を取り戻すことだー古くからの知恵の多くはそう教えてくれる。
ー『ティール組織』第5章の冒頭の文章より
一方で、教材や漫画など、自社のサービスを無料で開放する会社がどんどん出てきました。これは驚くべきことです。
想像以上に、社会がホールネスを取り戻すために動いていると感じました。
4. 日本はこの先どうなっていくのか?
この先の日本は、どなっていくのでしょうか?
おそらく組織によって2つに分かれる様な気がします。
1. ホールネスに目覚め、統合に向かう組織
子連れ出勤、リモートワークなど新しい手法に取り組み、メリットを感じた組織は、ホールネスに目覚め統合に向かうでしょう。
人の働き方、価値観などの多様性を受け入れ、それらを統合していく道を受け入れる組織は今後増えていくと思います。
2. 他人を恐れ、分断に向かう組織
当然、今回の騒動の中でうまくいかなかった組織も出てくるでしょう。そうした組織はより、社員を「組織に害をなす存在」=恐るべき対象と見なすでしょう。
そうした場合、組織は分断へと向かうと思います。オレンジからアンバーへ。意識のレベルを下げる企業も出てくるかもしれません。
それもまた致し方ないことだと思います。
この先は、上記の組織の二極化が進むような気がします。
日本はどちらの道に進むのか? これからさらにたくさんの変化がやってくるかもしれません。その時の道標として、ティール組織をぜひ手にとって、自分の進むべき道を探してみると良いのではないでしょうか?