英語民間試験延期ー大学入試改革の問題点の整理と解決策を考える(1)

目次

1. 大学入試改革はなぜ必要だったのか?

そもそもなぜ、大学入試改革は必要だったのでしょうか?大学入試改革の目的について再確認してみたいと思います。

 

1-1. 国際競争力の低下

日本の国際競争力が低下している、という話があります。詳しいデータはこちらをご覧ください。
 
▼IMD世界競争力ランキング2019、首位シンガポール。日本は30位で凋落止まらず
https://sustainablejapan.jp/2019/06/04/imd-world-competitiveness-ranking-2019/39996
 
この記事を見るだけだと、結構日本の順位はひどいです。

生産性&効率も56位と下から8番目でかなり深刻な状況。政府系金融と物価も59位と極めて低い。企業の競争力にとって非常に需要な「姿勢&価値」でも51位で非常に悪かった。

 
国際競争力のランキングというのは調査方法によって順位は異なってくるので、別のレポートでは別の順位になっていますが、どのレポートでもだいたい共通しているのが、日本のランキングは下がっている傾向にある、ということです。
おそらくですが、日本はあまり変わっておらず、アジアの国々の成長がすごい、ということなんでしょう。
 
この点に関して、経済界から教育に対して「このままではまずいよ」という提言もあり教育を変えよう、ということになっています。
▼経済界からの主な提言ー文部科学省
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1409881.htm

 

1-2. ゆとり教育の失敗

教育改革のターゲットが「大学入試」になってしまったのは、ゆとり教育の失敗があります。
教科をまたぎ、実践的な思考力を育てる目的で「総合的な学習の時間」が導入されました。ゆとり教育も文科省としても大きな改革だったと思います。ですが、「PISAショック」と呼ばれる出来事があり、元の教育に戻ってしまったという、苦い失敗経験があったのです。
 
▼平成の「ゆとり教育」、実は成功していた?尚早な「脱ゆとり」への転換こそ失敗だった?
https://biz-journal.jp/2019/04/post_27491.html
 
個人的な経験からですが、私はゆとり教育は一定の成果をあげたのではないかと思っています。いわゆる、ゆとり世代と呼ばれる若い人たちと話すと、彼ら、彼女らは「しっかり考えているなぁ」と、結構な頻度で感心します。自分の意見をしっかり持っていますし、斬新なアイデアを思いつくのも上手です。もちろん、たまたま話した人たちが優秀だった、ということもあるかもしれませんが、ゆとり世代の能力の高さを感じることが多いのです。
 
話が脱線しましたが、文科省としてはゆとり教育の失敗を踏まえ、どうしたら逆行しない改革ができるだろうか?と考えた結果が「大学入試から変えていく」ということなのだろうと思います。入試が変われば、必然的に高校の教育->中学の教育->小学校の教育が変わっていくだろう、ということなんだと思います。

 

2. 大学入試改革の問題点はなんだったのか?

私は、従来の教育に疑問を持つ立場なので、大学入試改革には基本的には賛成です。しかし、同時に大学入試改革が抱える問題についても認識をしておく必要があると思います。

 

2-1. 格差の問題

英語入試の問題点はまさにここにあります。地方に住む人の負担が大きすぎるという問題です。中には受験するためには、1泊しなければならない人もいるそうですね。2回受験のチャンスが増えたのはいいのですが、逆に負担が増えるという結果になってしまいました。

 

2-2. 採点の公平性の問題

もう一つは記述式の採点に関する問題です。採点には大学生のアルバイトが関わる可能性があるということで、本当に公平な採点ができるのか?ということが問題になりました。

 

2-3. 問題の根底にあるもの

今上がっている問題は、前に書いた二点ですが、その問題の根底には「勉強は努力でどうにかなる」「努力できないのは本人の責任」という価値観が全体的にあるように感じます。文科省の人たちは、きっと子どもの頃から相当な努力をされてきたのでしょう。
 
しかし、残念ながら生まれた環境、育てられた環境によっては、「努力しろ」と言われてもできないことはあるのです。それは、経済的な理由だけではありません。メンタル・環境・身体など色々な理由があります。
 
恵まれた環境で育った人が、公平性を必要とする共通テストの課題を考えられるようになるにはどうしたらいいのでしょうか?

 
 

ここまででずいぶん長くなってしまいましたので、続きはまた次回に書きたいと思います。

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