上野千鶴子名誉教授の東大祝辞にあった「メタ知識」ってなに?

上野千鶴子名誉教授の東大入学式での祝辞が注目を集めていますね。
さて、その祝辞の結びにあった「メタ知識」とは何か?とても気になったので調べてみました。
 
プログラミングとメタ知識についても後半で書いています。
 

目次

1. 東大入学式での祝辞の「メタ知識」

私が一番気になったのは、こちらの部分です。
 

大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。知を生み出す知を、メタ知識といいます。そのメタ知識を学生に身につけてもらうことこそが、大学の使命です。ようこそ、東京大学へ。
ー平成31年度東京大学学部入学式 祝辞(東京大学WEBサイトより)

 
祝辞全文はこちら(画像クリックで東京大学のWEBサイトに飛びます)


 
ここで気になったのが
 ・メタ知識とは何か? 「メタ認知」とは違うのか?
 ・メタ知識は大学生(18歳以上)でないと学べないのか?
ということです。
 
それぞれについて、調べて自分なりにまとめてみました。
 

2. メタ知識とは何か?

以下の「メタ認知」の記事でも書きましたが、「メタ」には「高次の」という意味があります。高次の知識とはどういう知識なのかをまとめてみました。
 
過去のメタ認知記事
▼アクティブラーニングの目的は「メタ認知」
https://i-learn.jp/article/4151
▼「メタ認知」を身に着けるための教養とプログラミング
https://i-learn.jp/article/4154
 

2-1. メタ知識とは何か?

メタ知識=高次の知識とは、一体どういう知識なのでしょうか?
いろいろ調べた結果を一言でまとめると、「ある分野の結果を網羅できる知識」だということがわかりました。
 
例えば、英単語という分野についてはこんな「メタ知識」があります。

このcideの語源がラテン語で「切る」と知っておけば、
色々な単語をカンタンに覚えられます。

genocide:geno(民族)+cide(切る)= 大量殺人
suicide:sui(自分)+cide(切る)= 自殺
homicide:homi(人)+cide(切る)= 殺人
pesticide:pesti(虫)+cide(切る)= 殺虫剤
insecticide:insecti(虫)+cide(切る)= 殺虫剤

出典:メタ知識で英単語を記憶する-相馬一進公式サイトより
https://www.personal-promote.com/?p=7340
 
ビジネスという分野ならば、売ることが重要ですから「マーケティング」「営業」がメタ知識になりますし、さらに「マーケティング」「営業」のさらに上位のメタ知識は「心理学」になると思います。
 
メタ知識はグラデーション的な階層構造であり、メタ知識の上にもメタメタ知識、メタメタメタ知識というものがあるということになります。

 

2-2. メタ知識とメタ認知

メタ知識を知る、のは簡単でしょう。心理学の本は世の中にたくさん溢れていますし、マーケティングや営業の本もたくさん溢れています。
「知る」というレベルでは小学生でもできると思います。
 
難しいのはそのメタ知識を、現実世界の具体的な方法に置き換える方法。これが難しい。この現実世界に適用するために必要な力が「メタ認知」ということになります。メタ知識の中から共通要素を抽出し、現実的な具体論にするためには「認知=知ること、知覚すること」がないと難しいでしょう。
 
英単語の例を図にしてみました。

この図でいうとメタ認知することによって、メタ知識を生み出しています。このメタ知識が最近、本屋さんで平積みの本「語源図鑑」です。
 
また、逆のパターンも現実の世界ではあると思います。今回の東大祝辞にもこんな一節がありました。

世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひと…たちがいます。がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。

これも「メタ知識」になりますが、この「メタ知識」によって「ああ、自分は恵まれているんだな」といった自分に対する「メタ認知」が生まれた人もいることでしょう。
 

2-3. メタ知識は大学生にならないと身につけられないのか?

個人的な感覚になりますが、「高校生までは詰め込み型の教育で、大学生になったらメタ知識」というのでは遅い気がしています。
たとえば、「手段と目的」「全体と部分」というメタ知識(考え方、フレームワーク)がありますが、これをいかに普段取り入れるか?という訓練は小学生のうちからでもやっておいた方がいいでしょう。
 
私のように元々「メタ認知」が足りない人間が学ぶには、大学からでは遅すぎると思います。
というのも、私はずっとこういうメタ認知ができない人間でした。ですが、子どもの頃から少しづつでもトレーニングしておけばかなり違ってきます。
メタ認知的トレーニングを行なっている塾の経営者から、子どもたちの能力がスポーツ面、勉強面で伸びているという話も聞いていますので確かな話です。
 

3. プログラミングにおける「メタ知識」は

プログラミングの「メタ知識」は、皆さんご存知の3要素です。
 ・順次実行
 ・条件分岐
 ・反復

ですね。
 
ただ、この「メタ知識」のレベルは「今のプログラミングをカバーできるレベル」だということです。これさえ、理解しておけばだいたいのプログラミングを書くのには困らないでしょう。
 
ですが…もしかしたら、プログラミングにはもっと上のレベルの「メタメタ知識」があるのかもしれません。それはコンピューターに関する素養であったり、感覚であったりするものかもしれません。そういったメタメタ知識があると新しいプログラミング言語を生み出したり、コンピューターを進化させたりすることができるかもしれません。
 
次の時代を担う子どもたちの指導をする大人は、今の「メタ知識」に満足することなく、「この上のレベルのメタ知識は何だろう?」と常に上位のレベルを探し続ける必要があるでしょう。
 

3. 「メタ知識」ってなに? まとめ

メタ知識とは、「ある分野での結果を網羅する知識」であり、メタレベルが高いほどより広範囲を網羅できると言えます。
しかし、高いレベルのメタ知識を現実世界に根ざした具体論に落とし込むのが難しいともいえます。
 
「メタ知識」と「メタ認知」を両輪で育てつつ、メタレベルを自在にあげたり下げたりできるようになりたい…と思っている今日この頃です。

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